第4章 目覚め
「お嬢様!お帰りになっていらしたんですね!」
甲高い声に目を開けると
カーテンの隙間から
薄っすらと朝日が差し込んでいた
ベッドサイドの時計を見ると
am 6:00だった
『………ハァ…………おはよう…ばあや…』
「おはようじゃございませんよ!マネージャーさんから、お嬢様がパーティーの途中で居なくなってアチコチ探していると何度もお電話頂いて、ひと晩じゅう心配していたんですから!」
ばあやと呼ばれたその年配の女性は
プリプリと怒りながら部屋の端から順にカーテンを開けていく
『…居なくなった…って……ただ家に帰って来ただけじゃない…』
「ご自分のお車は?どうされたんです」
『……向こうの駐車場に置いてきた……じゃなきゃ帰ったの…すぐバレちゃうでしょ…』
「…んまぁ…………次のパーティーこそは最後まで出るって…この間マネージャーさんと約束したばかりじゃありませんか」
『……そう…だけど……つまらなかったんだもん…』
そこまで話した時
ばあやはテーブルの上にあるワインに目を止めた
「お嬢様‼︎またワインをお飲みになられたんですの?私があれほど…」
2脚のワイングラスを手に取ると
言葉を止め
ベッドの方を見たばあやは
アンナの隣でブランケットを肩まで引き上げている僕に初めて気が付いた
「…まぁ‼︎お客様がいらしたんですの!」
「……どうも……お邪魔してます…」
「まぁまぁ!大変失礼を致しました!…お嬢様!早く仰ってくださいませ…」
『だって、言うヒマな…』
「朝早くから騒がしくしまして申し訳ございません…いま、お茶をお入れ致しますワ…」
「…ぁ……いいです…何も……お構いな…く…」
僕の声には耳を貸さず
ばあやはいそいそと部屋を出て行ってしまった
『………もぉ…』
不満そうにため息をついた彼女を見た途端
僕は吹き出してしまった
ひとしきり笑った僕は
涙を拭いながら言った
「……君は…不思議な人だね…」