第3章 バレンタイン※爆豪勝己の場合※
そうしてバレンタインの恒例行事も終わり、その日の授業は緊張と不満と呑気が渦巻きながら終わったのだった。
学校の帰り道、戦場は爆豪と手を繋ぎながら沈みゆく夕日を背に歩く。
「今日ウチ寄ってってよ」
顔を覗き込みながら一言。
これはもしやバレンタインチョコは私ですのパターンか?とどんどんとモヤモヤが募る。
おぉ、と返すとふふん、とご機嫌。
こちとら一週間以上モヤモヤイライラしてんのにこの女ときたら…。
他愛もない話も上の空で、何度か戦場に「ちょっと聞いてる?」と怒られてしまった。
戦場の家は何度も上がったことがある、
両親は健在で、初めて行った時もおやつやらなんやらと出してくれた。
「ただいまー、って言っても今日お父さんもお母さんも夫婦水入らずでディナーに行ってるんだけどね」
玄関を入るとそう言う。
期待せざるを得ない。
ドキドキと胸を高鳴らせながら戦場の自室へ入る。
扉の横にスクールバッグをドサッと置き、さも期待してませんけど?と平常心を保ちつつベッドサイドのローテーブルに座る。
「10分くらいここで待っててくれる?」
爆豪「あ?おぉ」
そう言い残してそそくさと自室を後にする戦場。
残された爆豪はいろいろと考えを巡らせたが、下半身が自分の考え以上に期待をしているようで考えがまとまらなかった。
爆豪「あ”-、クソがっ…」
独り言ちてしばらく、戦場が帰ってきた。
なんだかいい香りとともに。
「おまたせ~!少し早いけど晩御飯!」
テーブルに置かれたのはカレーと卵やトマトで彩られたサラダだ。
「ほら、勝己甘いのダメじゃん?辛い物が好きって言ってたからこれ作ったの」
爆豪「ほー」
「市販のルーを使わずに自分でスパイス調合して作ったんだよ!楽しかったけど苦労した!口に合うといいんだけどどうかな」
一週間ずっとカレーだったんだから!と言いながらドレッシングをかけたりお茶をコップに注いだりしている。
爆豪「いただきます」
一言、スプーンを持って一口運ぶ。
最初に鼻につく甘い香り、だが甘いと認識するよりも先にカッと舌にくる辛味。
爆豪「!うめぇ」