第1章 unlucky men
「ふふ、ちょっとからかっただけ!」
「なんだよ!もう……」
「ごめんごめん、翔ちゃん、ちょっと巻いてみなよ」
「うん。そうする」
チャリン、と軽い金属音を立てて、チェーンが俺の手首に纏われる。
手の甲で、鍵のチャームが光を反射させる。僅かな凹凸に輝く銀は、見惚れてしまいそうに綺麗だ。
だがそこで俺は、ひとつ、かなり重要な問題があることに気付いた。
これはチェーンの端と端を金具で留めるタイプのブレスレットだ。しかも、ぴったりなサイズ。
つまり、自分の手首の上で、器用にチェーンとチェーンを留めなければならないのだ。
金具と格闘する。
チャリ、チャリと手の中で虚しくチェーンが回る。
嵐の中でも、自分が不器用であることは自覚している。大野さんは器用だから、こんなものがつけられるんだろう……。
本当に、なかなか、つけられない。
自分には無理なのではないかと悟ったのは、何度やっても金具が手の甲から滑り落ちてしまうことに、いい加減苛立ちを覚えてきた時だった。