第8章 願い
マンションへ戻り
部屋のドアが閉まった瞬間
リンはセツナに抱き付いた
「…っ……リン…」
『……』
「…………リン…?」
『………お願いセツナ……私を攫って逃げて……』
リンの瞳から涙が溢れるのを見て
セツナは言葉を失ってしまった
『……二代目になんてなりたくない………私は…アナタと生きて行きたいの……』
リンはそう言うと
堰を切ったように泣き出してしまった
リンの涙が収まるまで
セツナは優しく彼女の背中を撫でていた
ひとしきり泣いた後
リンは自分自身にも言い聞かせるように言った
『……セツナ………私は…父のようにはならない…』
そんな彼女を見て
セツナは優しく頷いた
「…………リン…………全てを捨てるというならそれもいい……」
『……" 暁辰会 "が……無くなってもいいの…?』
「……そんなものより…オマエの幸せの方が大切だからな………オマエの人生は…オマエの好きなように生きればいい…」
『………セツナ………私は…アナタと一緒に居たい…………親代わりなんかじゃない……セツナの…本当の家族になりたいの……』
リンの真剣な瞳が
セツナを捉えた
『……セツナ……愛してる……』
零れ落ちた涙ごと
セツナは
リンを強く抱きしめた
「……リン…………俺はもう……オマエから逃げない……」
セツナはそう言うと
愛しい人の唇にそっと口付けた