第7章 事故
その夜
弁護士から辰彦の遺言が伝えられることとなり
リン・魅音・レイに加え
沢村 亮二をはじめとする" 暁辰会 "幹部の面々が
暁の屋敷の大広間に顔を揃えた
静まり返る空気の中
弁護士は事務的な口調で辰彦の遺言を読み上げた
まず
妻の魅音には自宅屋敷を
息子のレイには海外に個人名義で所有している別荘の権利を送った
更に2人には
それぞれ10億ずつの現金が送られる旨が告げられた
コレクションしていた多数の美術品や絵画は
生前に交流のあった友人達へ送られることとなった
そして
「残った多額の現金と、日本国内やアジア各地に点在する不動産をはじめ" 暁辰会 "の所有する全ての権利を、愛する娘・リンに送る」
と伝えられた
ざわつく声に
弁護士は「まだ…続きがあります」と言った
「上記の相続に於いては、娘・リンが " 暁辰会 "の二代目として自分の跡を継いだときのみ認められる。万が一娘が二代目の就任を拒んだ場合には、全ての資産を売却し、現金化した後、以下の公共団体・公共施設に寄付することとする」
弁護士は
数十件に及ぶ公共団体名・公共施設名を読み上げた後
「以上となります」と言った
弁護士が部屋を出て行くと
その場に居た全員が一斉にリンを見た
沈黙を破ったのは亮二だった
「……リン……内容は…理解したか…?」
『……………私が父の跡を継がなければ…誰も遺産を受け取ることはなく……" 暁辰会 "も全てを失って解散……と…いうことですよね…』
リンは独り言のようにそう言うと
ゆっくりと部屋を見渡した
口には出さなくても何を言いたいのかは伝わってくる
リンは重苦しい空気を払うように
敢えて明るい声で言った
『………安心してください………考える必要も無いくらい…答えは決まっています…』
リンの返事に
そこにいる全員が胸を撫で下ろした