第4章 stray cat
セツナがマンションに戻ると
リビングからリンが走ってきた
『…セツナ!…おかえりなさい…』
「…リン……遅くなるから…先に休むように伝えただろ…?」
言い終わってから
セツナはさっき決意したばかりなのに
もう過保護に接している自分に苦笑した
(……これは…当分時間が掛かりそうだ……)
手を伸ばし
指先でリンの頬の赤みに触れる
「…………痛かったよな……」
聞くと
リンは首を振った
「…他には…?……どこも怪我したりしてないか?」
『…私は…大丈夫……それより…』
リンは
身体のあちこちが包帯だらけのセツナを改めて見ると
泣きそうな顔をした
『……セツナ……私のせいで………本当にごめんなさい…』
泣きながら謝るリンの背中を
セツナは優しくさすった
リンの涙がおさまってきた時
セツナは躊躇いがちに言った
「………リン………オマエを助けた礼に…ひとつ…願いを聞いてもらえないか…?」
『…ウン…何でも言って?…セツナの頼みなら…私何でもする…』
セツナは
リンの肩に手を置いて
真っ直ぐに瞳を見つめた
「………俺の為に………笑って…欲しい…」
『………ぇ……』
「………ずっと……見たかったんだ………リンの笑顔……」
リンの唇が
小さく震える
溢れそうになる涙を一生懸命に堪えて
リンは
ぎこちなく微笑んでみせた
セツナは
両手でリンの頬を包むと
嬉しそうに微笑み
彼女の身体をそっと抱きしめた
「…………ありがとう……」
セツナの腕の中で
リンは目を閉じた
その口元には
穏やかな微笑みが浮かんでいた