第7章 過去
短い夏が過ぎ
季節は秋になった
響也とナナの仲は
近しい人達の間では既に公認となっていた
ナナと一緒に暮らすようになった直後から
響也はホストとしての一線を退き
経営に携わる仕事の方に移行していきたいと
社長に相談していた
店の中でも1、2を争う看板ホストの響也が裏方に回りたいと希望している話を
当初社長は問答無用で突っぱねた
けれど
諦めない響也の交渉と
「守りたい人ができた」という彼の想いに胸を打たれ
しばらくの間は現場の仕事と会社としての仕事を両立させることと
これまで以上に後輩の育成に尽力することを条件に
最後には認めてくれたのだった
ホストの仕事と掛け持ちで社長の下で経営について学ぶのはたやすい事では無かったけれど
ナナとの未来を思えば
多忙な日々も乗り越えることができた
顔を合わせられる時間は相変わらず少なくて
すれ違いばかりだった
けれど
2人は限られた時間を大切に過ごしていた
そんなある夜
社長とのミーティングが急に無くなり
久しぶりに予定が空いた響也は
家に帰りがてら " ROTTY " を覗いた
ナナと隆司は
閉店後の店内で
大量に入荷した冬物の品出しに追われていた
鍵の閉まったドアをノックすると
ナナが嬉しそうに走ってきた
『響也!』
「お疲れ…」
「おー響也!…珍しく休みだったのか?」
「…いや…急に空いたんだ……久しぶりに3人で飯でも…と思ったんだけど…」
『ホント!?嬉しい!』
「ナナ!急いで終わらせよう!」
『ウン!』
ナナと隆司は大急ぎで動き始めた
そして
30分後
「…よーし終わった!」
『響也!お待たせー!』