第6章 ある夏の夜※
車の中で
愛子はナナに薄く化粧を施すと
ワックスで髪を整えた
「……ウン……ナナちゃん…すごく綺麗…」
強引な愛子に対して抵抗する事を諦めたナナは
人形のようにされるがままになっていた
愛子は煌びやかなネオン街へ車を走らせた
行きつけのワインバーで軽く食事をした後
愛子は「もう一件だけ付き合って♡」と言うと
ナナに腕を絡めた
ワインバーから歩いて数分の場所に
その店はあった
『T.O.P.』
金色の文字が
黒い大理石の壁に一際輝いていた
ナナは愛子に腕を引かれながら
数えきれない程の電飾に彩られた眩しいエントランスへ足を踏み入れていった
「「「いらっしゃいませ!!」」」
背の高い男に案内され
柔らかなソファに腰を下ろしたナナは
茫然とした顔で辺りを見回した
『…………あの………ココ…っ…て……』
「…アラ……ナナちゃんこの店初めてだったの?」
『……?…』
「…雅ちゃん呼んだから…もうすぐ来るわよ♪」
『‼︎』
アイスペールやボトルが次々とテーブルの上に並べられ
目の前のグラスに氷が入れられていく
流れるような動きを
ナナは放心したように見ていた
「愛子さーん♪こんばんは」
聞き慣れた声に
ナナは思わず顔を伏せた
「こんばんは雅ちゃん♪今日はお友達連れて来たの」
「へぇ…愛子さんの友達なんだ?この綺麗なヒ…ト…?……ナナ…⁉︎⁉︎」
雅の驚いた顔を見て
ナナは泣きたいような気持ちになった