第3章 悪夢
「……」
『……私の身体……こんなに…汚れてるの…』
「……」
『……だから……アナタみたいな人に…大切にしてもらえるような価値なんて…ないんだよ…』
ナナの震える声が
響也の胸を締め付けた
響也はナナの身体を抱き上げ
シャワーの下に下ろした
そして響也は
何も言わずにナナの髪を洗い始めた
シャンプーの泡を流すと
響也は自身の濡れたシャツを脱ぎ捨てた
そして
今度は
ボディソープを泡立て
ナナの身体を丁寧に洗っていく
首から
肩
背中
腰
太腿
脚
今度は
身体を前に向け
腕を洗った
響也の指が
胸の傷に触れた
『……』
「……痛い…?」
ナナは
俯いたまま首を横に振った
響也は
優しく洗い進めていく
「……ナナ………オマエは…汚れてなんかない…」
『……』
「……思い出したくもないような過去なんて……もう…全部忘れるんだ…」
ナナは下を向いたまま泣いていた
響也の頬にも涙が溢れていた
「…心配すんな…」
響也は両手でナナの頬を包んだ
「……俺が……絶対に忘れさせてやるから…」
ナナは涙でグシャグシャになった顔を上げた
温かなシャワーに打たれて
2人は唇を重ねた
広いベッド
柔らかな毛布にくるまって
響也は
腕の中で小さな寝息を立てているナナの横顔を見つめていた
身体中に付いた無数の傷
それ以上に
深く傷付いてしまったナナの心を想った
(……これからは……俺が守るよ……)
ナナの髪の香りを深く吸い込むと
響也も瞳を閉じた