第3章 悪夢
数時間後
『…………………ャ………………ヤメ…………………来な…いで……………………ぶたな………で……………お願………許し…………』
「…………ナナ…?」
『……………メ………ナサ…………………ゴメ……』
「…ナナ……ナナ…!」
響也の声に目を開けたナナは
真っ青な顔をして震えていた
「……ナナ…?」
『…………ぁ………ゴメン…なさ…………大丈夫……怖い夢…見ただけ…』
「……」
ナナは顔を洗ってくると言ってベッドを出た
響也はキッチンへ行き
冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出すと
バスルームのドアの前へ行って声を掛けた
「……ナナ……大丈夫か?」
問いかけても
返事はない
聞こえてくるのは
水の流れる音だけだった
不審に思った響也が静かにドアを開けると
鏡の前で
ナナはハサミを手にしていた
ナナは左手で耳の横の髪を掴むと
おもむろにハサミを当てた
「ヤメロ!」
響也はナナの手首を押さえた
パラパラと床に散らばる髪
『離して!』
「ナナ…落ち着け…」
『…嫌……なの………この髪が嫌なの!』
「……分かった……俺がすぐに切ってやる………だから…こんな事するな…」
震える手からハサミを受け取り
洗面台に置くと
響也は
泣きじゃくるナナの身体を
なだめるように強く抱きしめた