第12章 ※炎炎 【煉獄杏寿郎】2
俺が家に戻ると、ダイニングテーブルに一人分の夕食が用意されていた。寿美も夕飯を食べずに待っていたわけじゃなくて良かったとほっとする。
寿美は風呂に入っている様だった。
俺は荷物を置きに部屋に行き、壁に掛けてある鏡に自分の顔を映す。
・・・瞼は腫れ、目は充血して赤い。明らかに泣いた後の顔だった。これは誤魔化せるか・・・?
とりあえず、洗面所に行き、バスルームの寿美に、「ただいま。遅くなってすまない。」と声を掛ける。
俺は火照った顔を冷やそうと思い、冷たい水でバシャバシャと顔を洗っていると、寿美がドア越しに話しかけてきた。
「杏寿郎さんおかえり。お疲れ様。」
「仕事・・何かあった?」
湯船につかっているのだろうチャプン、チャプンと水の中を動いている音がする。
「いいや、ちょっと帰り際に相談を受けた。」
「ふーん。教育実習に来ている女の子?」
「・・あぁ、そうだ。なんだか泣いていたからな、ほっとけなかった。」
俺は・・・実習生が女だと寿美に言ったか?
泣いていたのは事実だからな。・・嘘ではない。・・・俺も泣いていたが。
「・・・そう。・・・ねぇ。ふた月ほど前から杏寿郎さんの元気が無かったのはその実習生と何か関係があるの?」
ザバッーっと湯船から上がる音がする。
・・・・・げに恐ろしきは女の勘
口から心臓が飛び出すかと思った。
ドッドッドッと心臓が五月蠅い。身に覚えが無いという風に答える。
「ん?何のことだ?」