第17章 秘密
『ん…ぁ、あ…諸泉さんに…雑渡さん?』
「久しいな、和歌菜。」
『やっぱり、あたしを撃ったのは雑渡さんだったんだ…』
「あぁ、お前の暗殺命令が出た。」
彼女はその言葉ですべてを察したようで、ふぅ…と一息吐いた。が、すぐに何かを思い出したように勢いよく身体を起こした。
『…雑渡さん!!姉さんは…桜姉さんと椿姉さんは…、本当に…?』
「…2人共、美しく散っていったよ。あと、一番上の姉がお前にと…」
と言って、雑渡が取り出したのは桜の飾りをあしらった簪だった。彼女はそれを見て簪を握りしめた。
「…では私達は行こうか。」
と、雑渡は諸泉を連れて小屋を出ようとした。
すると、喜八郎がまた雑渡に噛みついた。
「ねぇ、はっきり言いますけど和歌菜はまだ正式な生徒じゃない。保健委員の手前もあるって言っても、自分の主の命令に背く意味はないと思うけど…。それでも、単に殺さなかっただけ?」
「・・・。」
喜八郎の言葉に、雑渡は足を止めた。
そしてフッ…と笑って、彼らを見ずに答えた。
「…なに。あれほど楽しそうな和歌菜を見たのは初めてだったんだ。」
『えっ…』
「私はこう見えて、和歌菜の幸せを願っているんだ。だから君達、頼んだよ」
そう言って、雑渡と諸泉は消えるように小屋を出た瞬間いなくなった。残された4年生達はまた途方に暮れてしまった。
「和歌菜、大丈夫?」
『えっ…あ、うん…。迂闊だったな…雑渡さんが見ていた事に一瞬気づいたのに…』
「全く君は…。」
「…とにかく、学園に戻るぞ。」
滝夜叉丸がそういうと、4年生達は全員うなずきタカ丸と守一郎が彼女を支えながら小屋を後にした。