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イケメン戦国/お殿様!って言わないで

第62章 譎詭変幻(けっきへんげん)


『ご心配は、ごもっともですね。』

三成も、珍しく眉間に皺を寄せながら同意する。

(確かに、銃で狙われたり、毒を飲まされたり…思い出すと散々な目に合わされてるよね、私。)

ひなも苦笑いを浮かべるが、信長の言う事も理解できた。

帰蝶は、見るからに利発で、あらゆる事象に詳しそうだ。

『秀吉さん、私も帰蝶さんの手を借りることに賛成です。

重々、気をつけますから。』

そう言って見つめると、秀吉はバツが悪そうに答える。

『いや、ひなが謝ることじゃない。それに、信長さまの決定は絶対だ。

だが、お前にされたことを思うと、どうしても許せないんだ、俺がな。すまなかった。』

秀吉は小さく頭を下げると信長に向き直った。

『信長様、申し訳ございませんでした。ですが…

帰蝶とは、決して二人きりにならぬよう、ご配慮を願いたく存じます。』

今度は深々と頭を垂れる。

『もとよりそのつもりだ。』

眉一つ動かさず信長が答えた。

『ひな。』

『は、はい!』

急に呼びかけられ、ひなが慌てて返事をする。

『北条の亡霊共に何か出来るとも思えんが、警戒するに越したことはない。貴様にこれを預けておく。』

どすりと重い音のする黒い物体が、目の端に映った。

『て、鉄砲…ですか?』

視線をやると、信長が大切にしている短銃だと気づく。

『弾は込めてある。俺が南蛮から仕入れた物だ。

火縄銃と違い、いちいち火薬を込めて火を着けずとも、撃鉄を起こせば、すぐに撃てる。』

(光秀さんも、それこそ帰蝶も使ってるけど、まじまじ見ると、やっぱりビビっちゃうな。)

ひなが、どうしたものかと触れるのを戸惑っていると、信長か問いかけた。

『おじけづいたか。』

『う…当たり前です!銃ですよ!いつでも人を…傷つけちゃうかもしれないんですよ。

怖いに決まってます。』

むっとしながら言うと、信長が面白いものでも見たうような顔で笑った。

『く…ははは!』

その場に似つかわしくない程の高らかな笑い声が、信長の口から溢れる。

『幾度も修羅場をくぐって来た貴様でも、まだ怖いものがあるとはな。』

『何度くぐっても怖いものは怖いです。』

暫く笑い続けた後、信長が急に真剣な顔をする。
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