第14章 蘭丸
お昼ご飯までは自由にしてていい、って秀吉さんが言ってたよね。
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『昼餉の後は、休んでいた間の決裁事案の処理と、信長さまに謁見(えっけん)に来られる方が数名いらっしゃいますので、悪しからず。
それまでに鋭気を養っておいてください。』
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…。
少し城内でも散歩するか。
…と言っても信長といえば、このお城の城主。
ひなが通ると、みんなササッと脇へ避け通り過ぎるまで低頭している。
うーん、偉い人って、みんな こんな扱いなのかな?
なんか逆に申し訳ない気がする。
いたたまれず、通りかかった中庭に出る。
庭には、明け方まで降っていた雨に濡れて、花々が咲き乱れていた。
『わぁ、綺麗な庭…。』
思い切り伸びをする。緊張で凝り固まっていた体が ほぐれるようだ。
『信長さま。』
呼ぶ声に振り向くと、蘭丸が花の間から ぴょこっと顔を出している。
ふふ、なんだか可愛いな。自然と笑顔になる。
『なにをされているんですか?』
『なにという訳じゃないんだけど、ちょっと疲れちゃってね。』
そう言いながら、庭にある小川沿いを歩く。
蘭丸も数歩あとに続きながら、小川に掛かる橋の上にたどり着いた。
『ふーん。信長さまでも疲れることがあるんですね。』
『そりゃ…。』
そうだよ、と言いかけて言葉を飲み込む。
振り返って目にした蘭丸の顔が、見たこともないような冷たい顔をしていたからだ。