• テキストサイズ

イケメン戦国/お殿様!って言わないで

第57章 劉寛温恕(りゅうかんおんじょ)


『いや、別に怒ってるわけじゃないから。

大変な時こそ笑ってるほうが、いい。それに不思議だけど、ひなの笑顔見てると、何があっても大丈夫な気がする。』

(家康…。)

『やれることはやった。あとは、この人の運と回復力にかけるしかない。』

『そうだね。』

改めて帰蝶の顔を見る。青白い顔は今も変わらず、起きる気配もない。

『ここはいいから、二人共しばらくゆっくりしてなよ。』

『でも、家康の方が、ずっと手術やらなんやらで休憩してないよね。』

(やっぱり家康の体が心配だよ。)

『俺は平気。もう、一段落着いたから様子見てればいいだけだし。心配しなくても、ちゃんと仮眠も取るから。』

言いながら、そっとひなの頬を撫で、ハッと我に返った様子で手を下ろす。

『…病み上がりと戦いずくめの二人に一緒に倒れられる方が、たまらない。』

家康の突き放したような言い方に、天邪鬼な気遣いを感じて嬉しくなる。

『解った。だけど絶対、無理はしないで。』

家康が呆れた顔で頷く。

『家康さん、俺からも頼みます。あなたが倒れたら、皆きっと大変な事になりますから。

…あ、俺もです。』

(間違いないな。っていうか一番、大変な事になりそう。)

『それじゃ、他の皆が待ってる広間にいるね。』

そう言って佐助と共に部屋を出るひなを、家康が一人静かに見送った。



人の気配が消えた部屋で帰蝶の側に座り直す。

その肢体に顔を寄せ、語り掛けるように口を開いた。

『ひながいるから俺は頑張れてる。

あんたも、あの子にここまでしてもらって、あっさり死ぬような生ぬるい事しないでよね。』

ひとつ溜息を吐いて腕組みをし、家康は壁に体を預ける。

そうして静かに目を閉じた。






※劉寛温恕〜些細なことを気にしない優しく穏やかな性格のこと。
/ 361ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp