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イケメン戦国/お殿様!って言わないで

第53章 川上之嘆(せんじょうのたん)


俺の考えが当たっていれば恐らく…。

『おい、秀吉を呼び戻せ。』

『御意!』

家臣が急いで立ち上がり廊下へ向かう。

『ああ、それから。今、お前に任せている仕事は、慶次に引き継げと伝えろ。』

『承知いたしました。』



離れて行く足音を聞きながら、手元の小包を持つ手に力を込める。

『市、貴様の思い無駄にはせん。必ずひなにも会わせてやる。

それまで、必ず生きろ。』


信長は、そう呟くと広間を出て、迷い無く目的の場所へと向かう。



……… ………


『入るぞ。』

滑るように障子を開く。

『ん?家康は席を外しているのか。』

文机の前には、ほんの今まで人の居た気配がある。

その声に、布団に横たわっていたひなが僅かに反応した。

『信長…さま?』

『すまん、起こしたか。』

静かに信長が枕元に座る。

『い、いけません。そんなに…近寄った…ら私の毒が…。』

もう麻痺が口元にもきているのが、話し方が ぎこちない。

『構わん。そんな事、気にするな。貴様、俺が今まで、どれだけ毒を盛られてきたと思っているのだ?

家康同様、毒にはある程度の耐性がある。』

子供のように得意気に話す信長を見て、ひなが くすりと笑う。

『子供みたい…ですね。』

『どこがだ。』

本人は全く自覚が無いらしい。

『ああ、いたずら好きなところか?』

そう言うや否や、ひなの体に覆い被さる。

『えっ!?ちょっと…信長…さま!』


クククッと笑いながら体を起こし、信長は慌てるひなを見下ろす。

その手には、ひなが大事に懐に隠しこんでいた巾着が握られていた。

『なっ…それ、いつの…間に!?』

ひなは動揺を隠せない。

『顔色が変わったということは、やはり何か隠しているな?

最近、心配そうな顔で時折 懐に手をやっていたろう。』

言いながら信長が巾着を空け、中にあった薬包紙を取り出した。

ひなは気まずそうに顔をそらす。その顎に手をかけ、こちらを向かせると信長が問いただした。

『ひな、お前の口から聞かせろ。これはなんだ?』
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