第5章 緑間 真太郎
_____つがえ、
息を吸う。
_____構え、
息を吐く。
_____狙い、
真っ直ぐに顔を上げ、目標を捉える。
_____定め、
一気に腕を引く。
そして、
_____放つ!
パァン、という心地よい音とともに、的の中心を矢が射抜く。
その光景に、思わず、「おお」と感嘆の声が口から漏れた。
弓を矢立に入れ、的から矢を引き抜きに行く。
苦労して矢を抜いた後、縁側に座って休憩をとった。
「相変わらず、だな」
不意に、後ろから声を掛けられて。
くるんと首だけ振り仰げば、幼馴染の、
……片想いの相手の真太郎が立っている。
ほんの一瞬だけ驚いたものの、
「____こんにちは、だろう。【親しき中にも礼儀あり】だ」
いつもの癖で、ぷいっと顔を逸らして、
口からはそんな言葉が飛び出た。
_____こんな事を言いたいんじゃないのに。
もっと他愛ない話をして、会話を繋ぎたい。
少しでも話していたい。
不器用な己には、出来ぬこととわかっているが。
「お前が来るという話は聞いてない」
ほら、こうして、ツンケンとした話し方しか出来ない。
「……突然で悪いが、
ラッキーアイテムが無いのだよ」
本当に突然だな。
「……今日のラッキーアイテムとやらは?」
いい加減、そのおは朝信仰をやめろ。
まあ、だいぶ慣れたが。