第4章 紫原 敦
※新婚さんパロになります。
オーブンから、いい匂いが漂ってきた。
頃合いを見計らって、ソファにもたれ掛かる敦に声をかける。
「むっくん、おやつできたよー!」
現在の時刻は午後三時。
お菓子好きな旦那様に、
「お菓子食べ過ぎだから三時から三十分だけの間に食べなさい!」
と約束した(させた)。
だから、その約束をきちんと守っておやつタイム。
でも、今日はちょっと特別。
だいすきなむっくんの、一年……ううん、一生で一度だけの大切な日だから。
「なーにー」
のっそりとこちらを向くむっくんに、満面の笑みを浮かべて一言。
「おやつ出来たよ!」
その言葉を聞いた瞬間に、むっくんの表情がキラキラと輝く。
待っててねと言って、オーブンの中のクッキーを皿に盛り付けていく。
バスケットボールの形にしたそれは、型崩れもなく綺麗に焼けてくれた。
味見をしてみたいけど、むっくんに一番に食べて欲しいから我慢。
そしてテーブルの上まで皿を運び、むっくんの前に座った。
食べていい? と問いかけるような視線に首を振って。
きょとん、としたむっくんに微笑みかけ、
「むっくん
誕生日おめでとう!」
一瞬呆気にとられたむっくんは、でも、すぐに笑い返してくれた。
「ちん、ありがとー」
それから。
むっくんが身を乗り出して、私にキスをした。
……柔らかいその感触に、頬が火照る。
一人で悶絶しているとむっくんが、
「お返し、してくれないの?」
と言った。
私は普段なら恥ずかしくて断るけど……
___今日は特別だもん。
一生懸命背伸びして、キスを返した。
むっくん本当に幸せそうな笑顔を浮かべて。
私も、すごく、すっごく幸せな気持ちになった。
(むっくん、生まれてきてくれて……
私を選んでくれてありがとう!)
(それこっちのセリフだし……クッキー美味しいよ)
(ケーキもあるからね!)