第20章 しんあい *
~夢主side~
新婚旅行は色んな意味でいい思い出になった。
お土産を渡そうとしたしのぶちゃんと蜜璃ちゃんに質問責めに合うし、宇髄さんは会うなりニヤニヤと楽しそうに茶化され続けた。
あれからいつもの通りの平穏な日々を送っていた。
「陽奈子ちゃん、食後のコーヒー用意お願いね?」
蜜璃ちゃんにお客さんのコーヒーを頼まれ、フィルターをセットしてコーヒー豆の袋を開ける。
ふわっと香るコーヒー豆のいい香り…
な、はずなのに。今日はなんだか不快な匂いに感じてしまう。
なんだろ、変な感じ…いつもならいい香りに感じるのに今日はなんだか…
その時はあまり気に止めることもなく、一瞬感じた違和感を気のせいだと思い、再びコーヒーを淹れることに専念した。
だけど次の日になっても、その違和感は変わらなかった。それに付け加えなんだか身体がポカポカする。
風邪でも引いたかな…
季節はもうクリスマス前。寒さが厳しくなってきて、油断していて風邪でも引いたと思っていた。
「陽奈子さん、手が止まっていますよ?」
「ご、ごめん!急ぐね!」
なんだかぼーっとしてしまって、つい手が止まってしまった。それをしのぶちゃんに指摘され慌ててコーヒーの準備をする。
「っ…、」
挽きたてのコーヒーが鼻を掠めた瞬間、一気に気分が悪くなってその場に蹲ってしまった。
「陽奈子さんっ!?大丈夫ですか、顔色が少し悪いようですが…」
「ご、めんね…ちょっと…」
結局、その後もまともにコーヒーを淹れることが出来なくて、私を心配したしのぶちゃんに「今日はもう上がって下さい」と言われてしまった。
自分の体調管理が出来てないことに申し訳ないと思いつつも、しのぶちゃんの優しさに感謝してお店を出た。
「はぁ~…まさに不甲斐なし…杏寿郎ならそう言うんだろうな…」
大人になっても体調管理が出来てないなんて、私もまだまだだ。今日は早めに休んで明日に備えよう。
少しだるい身体を引きずるように歩いていると、前から小さな子供を連れた親子とすれ違った。