第18章 代わり映えのない日々に花束を
その手には1本のガーベラに綺麗な水色をしたリボンが巻かれている。
それを義勇さんに手渡すと、玄弥くんがボソリと呟く。
「陽奈子さん…幸せ者っすね。」
「へ…?どういう…」
「お前は台無しにする気か?…陽奈子、煉獄から預かったものだ。受け取れ。」
玄弥くんの言葉がよく理解出来ずにいると、義勇さんが目の前にガーベラを差し出す。
「(台無し…?)…あ、ありがとう!」
ちょっと疑問に思いながら、それを受け取る。
そのガーベラが巻かれているリボンと一緒に付いているカードに目を通す。
『あなたが私の運命の人です。 フィエルテへ向かってくれ』
「杏寿郎ってば、こんなこといつも言ってくれるのに…義勇さん、玄弥くんありがとう!私、行ってくるね!」
毎日のように、私への気持ちをストレートに口にしてくれる。
なのに、なんで今日はこんな形なんだろうかと思いつつも、急ぎ足でフィエルテへと向かった。
少し…ほんの少しだけ、期待してしまっている気持ちを胸に抱いて。
フィエルテへ着くと、お店の中には不死川さんと玲愛ちゃん。そして、今年2歳になる2人の愛娘、沙那ちゃんが、不死川さんの膝の上でキャッキャと笑って出迎えてくれる。
「わぁ!沙那ちゃん、久しぶりだね?私の事覚えてるかな?」
3人に会ったのは数ヵ月前。
それでも覚えててくれたのか、ニコニコと笑っている表情が可愛くて堪らない。
「陽奈子ちゃん、久しぶりだね♡沙那も覚えてるみたいでよかった~!そのうち、2人の可愛い天使が見れるんだね♡」
「オイ…俺達は頼まれたことだけしときゃいいんだよォ。男の一世一代の大勝負に水指すようなことすんな…」
天使?大勝負?
頭には疑問符がいっぱい浮かぶ。
「パパだって言ってるじゃ~ん!もう!あ、ごめんね?これ、煉獄さんから預かってたものだよ♡」
差し出されたガーベラの花束。
今度はちょっと多いかも…数えてみると11本ある。
この花言葉は何だろうかとメッセージカードを探すけど、どこにも見当たらない。
「あ、オイこら、沙那ダメだろォ?これは大事なもんなんだ。こいつに渡してやれなァ?」
すっかりパパらしくなった不死川さんが、沙那ちゃんにデレデレしながら言うと、すんなりカードを手渡してくれた。