第17章 海と夏祭り *
ついに海へ行く日がきた。
水着を買って帰った日は、杏寿郎に何度も「着て見せてくれ!」とお願いされたけど、それは当日の楽しみにって丁重にお断りした。
だって…目の前で着て見せたら、襲われちゃいそうだし…
そんなこと考える私もどうかと思うけど。
「陽奈子!準備は出来たか?」
玄関から溌剌とした声で私を呼ぶ杏寿郎。
「あ、は~い。今行く!」
その声に、私も少し声を張って答えた。
これから行く海と、愛しい人がどんな反応をしてくれるのか…ワクワクと期待を膨らませて、つい声も大きくなる。
下へ降りると、大きなバンが2台停まっていた。
前の車の運転席から、宇髄さんがたばこをふかして待ちくたびれた様子だった。
「おっせぇよ。ったく、出掛ける前から盛ってんなよ~?」
「よもっ!?」「ち、違っ!」
ニヤリと口端を上げて、宇髄さんは楽しそう。
その私達の反応を見て、後ろにいる皆も笑っている。
「どーだかな?あ、お前らは後ろな?早く乗れよ、行くぞ!」
「すまない!陽奈子、荷物を貸してくれ。後ろに乗せるから」
杏寿郎に荷物を渡して先に車に乗り込むと、すっかり妊婦さんになった玲愛ちゃんがいた。
「わ~!玲愛ちゃん久しぶり!お腹おっきくなったね!」
「陽奈子ちゃん、久しぶり♡でしょ~?もう重たくて大変!」
「触ってもいい?…わっ!動いた!びっくりさせちゃったかな…?」
お腹に触るとポコッと赤ちゃんが動いた。
驚かせてしまったかと焦っていると、クスクスと玲愛ちゃんが笑う。
「ふふっ。大丈夫だよ。きっと陽奈子ちゃんに撫でて貰って嬉しいんだよ♡さねみんが触っても何も反応しないんだよね、パパなのに!」
「チッ、うっせェー。なんでお前には反応するんだァ?俺は父親だってのに…クソが…」
「不死川。父親なら気長に待て。それと舌打ちも止めた方がいい。」
「あ"ァ?喧嘩売ってんのか、テメェ…」
「も~、止めなよ、さねみん!パパになるんだから、その言葉遣いもいい加減止めたら?」
そんな言葉にもまた舌打ちをしながら、荷物を積み終えた杏寿郎が乗り込むと車を走らせた。
道中色んな話をして盛り上がる間、頭の片隅には常に水着のことがチラついていた。ふと横にいる杏寿郎に手を握られた。