第1章 本編
「不二子たん!」
「なんれす?」
「ボク、不二子たんのことがチュキ」
「ちょたろ、わたちには"けいたん"がいるんれし」
「それでもいいでしゅ。ボクはじゅっとじゅっとまってゆ!」
これが俺の初恋だった。
当時3歳・・・
淡い思いは、時と共に過ぎ去ってはくれなかった。
俺は、今でも不二子先輩を思い続けている。
そして不二子先輩の横にもまだ彼がいる…
──その笑顔、妖艶なり。──
「不二子先輩ー!」
俺は遥か前方をいく先輩を呼び止めた。
「おーチョタ」
「これから部活ですか?」
「そうそう」
先輩は相変わらず素っ気ない。
「一緒に行っても構いませんか?」
「うん」
俺は先輩に着いていく形で歩き出した。
「それにしてもあれですね」
「何?」
「先輩、美術部なのにここ何日か来てるじゃないですか。もしかしてうちのマネージャーに転向とかしたんですか?」
俺は疑問をぶつけた。
「まっさかー!私がマネージャーとか有り得ないしっ」
「で、ですよね」
先輩は、いつもの調子で笑って答えた。
内心ホッとした。
「あ、じゃあ私はここで」
「はい、また」
俺は部活へと急いだ。
その背後で先輩はヒラヒラと手を振り、スケッチブックを広げていた。