第6章 人生の核
「それじゃイデアく──」
さようなら、と背を向けて歩き出した私の服の裾を誰かが掴んだ。
顔だけ向けると、犯人はイデアだった。俯いていて顔は見えない。
「どうしたんだい?イデアくん」
「キミは、誰かの核になる……かもしれない」
「え?」
ちょ、いきなり何言ってんだ。私が誰かの核に?ないない。慈善事業なんてまっぴらゴメンだし、自由気ままで自分勝手に生きてる私に救われる奴なんていないって。
「世界は美しいんでしょ?その美しさを知ってるキミなら、きっと誰かの核になるよ」
──世界は美しい。
そう思えるような素晴らしい人物に会った私だからこそ誰かの核になれると、彼は言うのか。
しかも随分と確信めいた発言だ。
「そうだね……私なんかが誰かの核になれるならとても喜ばしいことなんだけれどね」
今度こそ彼らに別れを告げて、帰寮した。
オルトはお兄さん想いでいい子だったし、イデアも聞き上手で優しそうな雰囲気だった。
前世でも今世でも一人っ子だから兄弟がいるって羨ましいなぁ……。
「ヴィル!只今帰ったよ!自室の君はとてもおとなしくて人見知りだったけど、髪が炎のようでとても──」
「アンタ、今日のレッスンさぼったから明日のレッスンは二倍よ。覚悟しておくことね」