鏡の国で魔法にかけられて…‧*˚✩︎‧₊˚【ツイステ】
第6章 ジェイド 危険なうつぼの狂愛꙳✧˖°⌖꙳

「ふふ。ちょっとね。」
「分かった。二人でけっぱろ!やるからには本気でやらねばまいね!!」
熱血なエペルの指導のもと、時間も忘れて作業に没頭してしまい、気がつくとどっぷり日が暮れていた。
疲労で震える指でドアノブを回して、エペルの部屋を後にする。
あぁ…全力出し切ったぁ…。
裁縫ってこんなに過酷な競技だったっけ?
エペル…癒しの小動物は何処へやら…?
「あら?アンタがどうしてここに?」
「ヴィル先輩こんばんは。…っ!?」
ポムフィオーレ寮の入り口でヴィル先輩と鉢合わせると、吐息の触れる距離に先輩の美しい顔が迫る。
「ちょっと新ジャガ!!肌がボロボロじゃない!信じられないわ…来なさい!」
「へっ?えっ…と?わわっ…!」
先輩に手を引かれ、部屋に入ると豪華絢爛なドレッサーに座らされる。
うわぁ!煌びやかな化粧品がいっぱいっ!
ふふっ…見てるだけでテンション上がっちゃう!
「はぁ…よくそんなカピカピに干からびた肌で外に出られるわね?アンタ、ちゃんとスキンケアしてるの?!まったく…美は1日にして成らずなのよ。」
「すいません…」
うぅ…最近女子って自覚が無さすぎて、全く自分のお手入れをしてなかった…。
ジェイド先輩は本当にこんな私で満足してくれてるのかな?
外見も頭も良い先輩に比べて、私は何一つ自信を持てることがない。
「今日は特別にアタシがスペシャルケアをしてあげる。アンタ、元は良いんだから…。不摂生のドテカボチャたちに紛れてるからって手を抜いちゃだめよ?」
「はいっ…!」
厳しい口調とは裏腹に、優しい手つきで顔に触れられて、まるで女子の扱いを受けているんじゃないかと錯覚してしまう。
まさかね。先輩は私が女子だって知らないし…。
「自信を持ちなさい。アンタならアタシの隣に立つことを許してあげる。あんな腹黒毒キノコには惜しいぐらいよ。」
「えっ…ヴィル先輩…?」
「口を閉じなさい。リップが塗れないわ。」
褒めてもらえた…のかな?
先輩の言葉はいつもそっと私の背中を押してくれる。
本当に素敵な人だな。私も努力家の先輩を見習わなきゃ!
「本当にありがとうございましたっ!」
ふにゃっと嬉しそうに笑って、オンボロ寮に向けて歩き出した莉冬をヴィルは切なげに見つめる。
「まったく…人の気も知らないで…。綺麗になりたい理由が他の男なんて癪だわ。」
