第2章 Messiah【レムナン】
「その、昨日のことも含めて、色々言いたいことがあります。聞いて、くれませんか……?」
「……うん。聞く」
「ありがとうございます」
彼女を自分の腕から解放して、隣に座った。
「まず、昨日は本当にすいませんでした。僕のトラウマのせいで、ツバサさんを傷つけてしまいました。謝っても、謝りきれない、ですけど、僕がツバサさんを好きな気持ちは本物です」
「………!」
彼女が少し息を飲んでこちらを見る。
「僕じゃ、頼りないかも、しれません。でも、ツバサさんに守られるだけじゃなくて、僕が、ツバサさんを護りたいんです。僕に、あなたを護らせてください」
「………」
ツバサさんはこちらを見たまま動かない。
少しして、笑いながら言った。
今にも涙がこぼれそうな、その瞳で僕を見つめる。
「……ずるいよ、そうやって言われたら、私、断ること、できないじゃんっ……!」
そう叫んで僕の胸に飛び込んでくる。
僕は彼女を力強くぎゅっと抱き締めて、慰めるように頭を撫でた。
僕だけのツバサさん。
僕を助けてくれた人。僕を愛してくれる人。
僕が愛している人。
彼女への愛おしさが溢れて止まらない。
まずは腕の中で静かに泣くツバサさんを泣き止ませてあげなければ。
「ツバサさん、泣かないでください。貴女に泣かれると……心が痛みます。こっちを、向いてくれますか……?」
「……?」
彼女が顔を上げた瞬間、頬に手を添えて唇を重ねた。
時が止まったような感覚。
影を重ねて、声も吐息も飲み込む。
数秒後に離してツバサさんの顔を見た。
どうやら涙は止まったようだ。
「え……あ、れ、レムナン……?」
「ツバサさんが泣き止むには、コレが一番、いいと思ったので」
「……ありがとね」
少し不貞腐れた後にきちんとお礼を言ってくれる律儀な彼女。
これからはこの船で、信頼と愛情を注いでいこう。
僕だけの、素敵なメシア様に。