第2章 Messiah【レムナン】
案内も終わって、ツバサさんと二人で食堂へ。
「ふぅ、お疲れ様。案内だったとはいえ、この船は広いし、ちょっと疲れたでしょ?」
「いえ、確かに、少し疲れました。……でもそれ以上に楽しかった、です」
「そっか、それなら良かった。あ、ラーメン冷めないうちに食べよ?」
「はい、いただきます」
「いただきます」
ちゅるちゅると二人で麺を啜る。
食事と呼べるものを久しぶりに食べた。
あそこにいた時は、およそ食べられるものでは無いものが出てきていた。
それを嫌々食べる僕の様を楽しむマナンという人。
ああ、醜い。どうして人間の欲望はこんなにも醜いのか。
それに比べてツバサさんは僕にとって天使のような人だ。
顔も名前も知らない僕のことを、助けたいからという、ただそれだけの理由で救ってくれた。
僕から見れば雲泥の差だ。
奴隷のような生活を抜け出して、ツバサに連れられて逃げてきた。
そういえば、一つ気になっていたことを聞くのを忘れていた。
「あの、ツバサさん……?」
「ん?どうかした?レムナン」
「失礼を承知で、聞くんですけど、ツバサ、さんは……女性ですか……?それとも、汎性ですか……?」
「……この見た目じゃ分かりづらいもんね。……ごめんね、私は女だよ」
「どうして、謝るんですか……?」
「だって、レムナン、私が助ける前のこともあって、女の子苦手でしょ……?たまたま中性的な見た目で生活してたから良かったけど、私が女の子だって分かったら、レムナン、私と話しづらくなっちゃうんじゃないかなって思って……」
「そ、そんなことありません…!」
彼女の話を遮って否定する。
僕が貴女を避けるようになるはずがない。
「僕は、貴女が女性でも、汎性でも構いません。ツバサさんは僕にとっての救世主様なんですから」
「レムナン……」
「話しづらくなるなんて、そんなはずないです。……僕は女の人が苦手です。その事実は、変わらないですけど……ツバサさんは、大丈夫です」
話すのが苦手なのに、この時だけはスラスラと自然に言葉が出てきた。