第17章 看病
「では、天元殿。元気のあるうちに食事を摂ってください。」
いくらか食事を取らせ、薬を飲ませる。
「吐きそう?」
「大丈夫。」
杏寿郎は時間ぎりぎりまでいて、「宇髄。養生しろよ。」と、名残惜しそうに任務に行った。
じわじわと天元の熱が上がってきたらしく、顔が赤く、口数が少なくなってきた。
は天元の傷口に氷水で絞った布を当て、少しでも熱が上がるのを抑えようとするが、思うようにいかない。熱で苦しいのか、傷が痛むのか、天元は目を閉じているが、眠れない様だった。
「天元殿、つらそうですね。気休めに本当に膝枕しましょうか?」
天元は少し目を開けて、チョイチョイとすぐ横に座るように指さした。
言われたとおりに横に座ると、ごろりとうつぶせになりながら、の太腿の上にもたれる様にして上半身を預け、の腰に腕を回した。かなり体が熱い。
「この体勢が楽ですか?」
天元はこくこく頷き、の脇腹に顔を埋めた。
「重くてすまん。仰向けよりもこっちの方が楽だ。」
の腰をぎゅっと抱きしめながら、荒い息の合間に喋る。
「喋らなくていいです。鍛えているので重くても大丈夫です。」
天元は頷いたが、ちらりとを見て言う。
「さっきみたいに、天元って呼んでくれ。」
「・・・天元。分かったから。」
絞った手拭いで、額や首筋。背中の汗を何度も拭う。手が届くところは何度も拭いてやり、時々、サラサラの髪を手で梳かしてみる。さすがの色男。いい香りがした。
が、あちこち拭いたおかげか、少し体温が下がってきた。荒かった息遣いが少し落ち着き、眠っている様な呼吸になった。
外はすっかり日が落ちている。
途中、天元が目を覚ましたので、少し食べさせてまた薬を飲ませる。
「なー。これからも天元って呼んでくんね?」
「え?どうしてですか。」
「上官命令。」
「ずるいですね。それを言われるとハイというしかないです。音柱様を呼び捨てなんて畏れ多いです。」
「お前、俺をそんな風に思ったことねーだろ?・・お前に呼び捨てで呼ばれるの心地いいんだよ。」
「・・・善処します。・・・天元はたまにそうやって子どもみたいなこと言いますね。6尺もあるのに。」
「大きさ関係なくね?音柱様にそんなこと言って大丈夫?」