第8章 育手の家と墓
一刻程走って、育手の家へ着いた。
育ての家の隣には墓が4つあった。一つは新しい。はまずその新しい墓に手を合わせた。
杏寿郎が言葉に詰まったことに気付いてが説明をする。
「これは私の両親と兄。そして新しいのが育手のお墓なんだ。」
「・・・そうか。では俺も手を合わさせてもらおう。大切な娘さんと一緒にいさせてもらう報告もしないとな。」
丁寧に手を合わせる杏寿郎を見ては嬉しく思った。
「父も母も驚くね。」
育手の家に入り、少しの荷物と、床下に隠してあった箱を取り出した。
「これが選別を突破したら開けろと言われた箱。」
箱をそっと開けたら、日の呼吸の指南書が三冊と、まとまったお金、育手の刀の鍔。そして一言「生きろ」と書いた紙。
の目から涙が溢れてきた。
杏寿郎はの肩に腕を回し、が落ち着くまでしばらく寄り添った。
家の中を綺麗にし、帰路に着いた。
山の麓に下りながら杏寿郎はから育手の事について聞いた。
もう30年近く弟子をとっていなかったこと。家族を殺されたは親せきの家に引き取られたが、そこでも稀血のせいで親せきの命をも危ぶませてしまったこと。そのときに助けて貰い、その場で頼み込み、そのまま引取ってもらったこと。その親戚も少し前に鬼に喰われてしまったこと。
麓に着いたら二人はまた走って帰った。
家に着いたら日が暮れるまで鍛錬をし、夜には布団を並べて手を繋いで眠った。