第7章 失う覚悟
「その時は俺がを護って死にます。」
「自分の気持ちに気付いた以上、忘れることもごまかすこともできません。」
杏寿郎は首を横に振りながら槇寿郎に反論する。
「馬鹿かお前は。お前に目の前で死なれたの事も考えろ。死ななくても手足が千切れてしまうこともあるんだぞ。自分ではなく、がそうなった時にお前は冷静に任務を遂行できるのか?」
「・・・いや。もういい。お前が言い出したら聞かん事は分かっている。俺には関係のないことだ。好きにしたらいい。」
「父上。ありがとうございます。」
(いつになくまともなことを言われた。失う覚悟・・・確かにできるだろうか。)
杏寿郎は部屋に戻り、に父上の言葉を報告した。は心配そうにのぞき込む。
「結論としては許してもらった。」
「でも・・・。」
「でも?」
「鬼殺隊同士で恋仲になるなら、お互いを目の前で失う覚悟をしておけ とのことだった。」
「・・・。」
少しの沈黙の後、が口を開いた。
「では、その覚悟をもって、そうならない為の努力をしていこう。」
「私たちが出会った事実も、惹かれ合った事実ももう無かった事にはできない。
「・・ああ。その通りだ。君は強いな。」
「二人で知恵を出し合いながら、強くなれる方法を探っていこう。」
「後・・・杏寿郎。」
いつになく真剣な顔でが杏寿郎に向き直る。
「もし、戦いの中で私が鬼にされてしまったら、杏寿郎が私の首を切ってくれない?」
「ああ、わかった。そうしよう。そしてその後、俺も腹を切る。」
それを聞いては、さっきまでの強い瞳が急に困った様になった。
「・・・杏寿郎には後を追わず、幸せになって欲しい。」
「では、俺が鬼にされてしまって、に殺してもらったとしたら?」
「・・・私も後を追う。鬼とはいえ、あなたを殺めておいて何事もなく生きていけるとは思えない。」
「そうだろう?そういうことだ。でもが言うように幸せな未来を願う気持ちも分かる。難しいな」
「でも、槇寿郎様の言葉でまたすべきことが明確になったね。」
「あぁ ありがたいことにな。」