第111章 欲に正直に
「また私の部屋で飲むつもりなのか?」
夜になり、エマの部屋で
仕事をしていたエルヴィンは、
エルヴィンの座っている椅子の隅に
腰掛けているエマに顔を向ける。
エルヴィンがここで仕事をすることは
毎晩寝る前に歯を磨くような、
毎日の決まりきった習慣になっていた。
「聞いてなかったんですか?」
「いつも勝手に企画されているからな。」
エルヴィンはそう言うと、呆れたように笑う。
「そうだったんですね。
今回はハンジさんが
お酒用意するって言ってましたよ。」
「……嫌な予感しかしないな。」
エルヴィンは小さくため息を吐くと
エマの髪を撫で、
「多分、度が強い酒が多いだろうから
あまり飲みすぎないようにな。」
そう言って心配そうに
エマの顔を覗き込んだ。
「エルヴィンさんって、
お酒に酔うことあるんですか?」
エマは突然思い立ったことを質問する。
「若い頃はあったが、
さすがにこの年になると自分で加減が
できるようになるからな。」
エルヴィンはエマの髪を撫でながら言う。
エマはエルヴィンの酔ったところを
想像しようとするが、
頭の片隅にも思い浮かべることが出来ず、
考えをやめた。
「エルヴィンさんの酔ったところ、
見てみたい気もしますけど。」
「そうか。
きっと酔うとすぐ君に欲情する気がするが、
それでも平気か?」
エルヴィンは楽しそうに
エマを後ろから抱きしめる。