第91章 好き
「……そうか。」
明らかに肩を落とすエルヴィンを見て
エマはまた笑うと、
「そんなに嬉しかったんですか?」
そう言ってエルヴィンの顔を覗き込む。
「嬉しかったに決まっているだろう。」
エルヴィンは顔を上げると、
エマの肩を掴む。
「……そんな訴えるような目で
見ないで下さい。」
エマは思わずエルヴィンから目を逸らす。
だが、エルヴィンの熱い視線は、
エマに向けられたままだ。
「あまり言い慣れないんですよね……
というか、エルヴィンさんみたいに、
サラッと言えないんですよ。」
「いや、今君は完全に
サラッと言って成したが。」
エマの目を見つめ続けるエルヴィンに、
「……エルヴィンさんは、
言い慣れてるのかなって思ってました。」
と、エマはふて腐れたように言った。
「それは、私が貴族女性の夜の相手を
していたことが関係しているのか?」
エルヴィンのエマの肩を掴む手が、
心なしか弱まった。
「……関係ないとは言いきれないです。
他の女性にもサラッと言ってたのかな
と、ふと思うだけです。」
エルヴィンは大きくため息を吐くと、
「……エマ。それを私が完全に
否定することはできない。」
そう言ってエマの肩から手を離す。