第89章 勘違いは勘違い
基地に着くと、
「結局暗くなっちゃいましたね。」
そう言ってエマは空を見上げる。
空には星が目立ち始め、
澄んだ空気が少し肌寒く感じた。
「階段で厄介事に出くわしたからな。」
リヴァイはそう言うと、
思い出したかのように吹き出した。
「それにしても、
お前の特技には、さすがに驚いた。」
「私の唯一の特技ですから。
また喧嘩ふっかけられたら、
呼んでください。」
エマはリヴァイの笑う顔を見て、
さっきまでの混乱を一瞬忘れ、
嬉しい気持ちになる。
「呼ばねぇよ。
もうあんな肝を冷やす思いはしたくねぇ。」
「でもリヴァイさんと私が揃ってれば、
殴り合いをせずに喧嘩を収められますよ?」
エマはそう言って
リヴァイの顔を覗き込む。
リヴァイの目は、
ゆっくりエマの方に向いた。
「そうだろうな。
だが、もうあんな危ない真似はするな。」
リヴァイは真剣な目でエマに訴えるが、
「いや、
絶対負けないから大丈夫です。
ほら。」
そう言って袖口から次々とトランプを
取り出すエマを見て、また笑い出す。
「エマよ……
お前もイカサマしてたのか……」
「相手が全員あんな見え見えの
イカサマしてるんですから、
私だけ真面目に勝負するなんて、
バカバカしいですよ。
目には目を、ってやつです。」
そう言って胸を張るエマの頭を
リヴァイは乱暴に撫でると、
「悪くない。」
そう言ってニヤリと笑った。