第86章 本音と建前
「いいんだ。
君も疲れているんだろう。寝なさい。」
エルヴィンはエマの髪を優しく撫でる。
「……寝かせるつもり
ないんじゃなかったんですか?」
「そのつもりだったが、
君のその顔を見ていたら気が変わったよ。」
エルヴィンはそう言って
エマの目を見つめた。
「さっき、リヴァイに何かされたのか?」
エマは口を噤む。
「君の心が揺らぐことがあったのか?」
「そうじゃないです。」
エマはすぐにそう答えると、
エルヴィンの顔を見た。
「そうか……それならいいんだ。」
エルヴィンはエマに優しく笑いかける。
「情けない話だが、
やはり不安になるんだよ。」
エルヴィンの痛みを無理に隠すような笑顔に、
エマは胸が締め付けられる思いがした。
「もう君を、離したくない。」
エマは、そっとエルヴィンを抱きしめると
「不安にさせて、すみません。
私はエルヴィンさんの側にいますから。」
そう言って、エルヴィンの胸に顔を埋めた。