第69章 運命の恋
エマがまだ、クロルバ区にある
食堂で働いていた頃のことだった。
時間は昼時を大きく過ぎた頃、
店内には客もおらず、
エマは暇な時間を持て余す。
そんな時、訓練終わりのエルヴィンが、
一人で店に入って来た。
「エルヴィン団長。いらっしゃいませ。」
エマは笑顔で声をかける。
「いつもの席は空いているかな?」
エルヴィンは柔らかい表情で問いかける。
「もちろん、空いてますよ。」
エマはそう言うと、
いつもの奥の窓際の席へエルヴィンを案内した。
「この席、いいですよね。」
エマは水をグラスに注ぎながら言う。
「そうだな。
周りから騒がれる心配もなく、
旨いものが食べられる。」
エルヴィンはそう言うと、エマに笑いかけた。
その時、
店のドアが乱暴に開いた。
「おい!ジム!いるんだろ?」
「金返してもらいに来たぞ!」
エマにとっては聞き覚えのある、
借金取りの男二人の声が店内に響く。
エマは大きくため息を吐くと、
入り口の方に向かった。
「すみませんが、今店主は不在でして。」
エマはなるべく丁寧に言うが、
男たちは
「あ?嘘ついてんじゃねぇよ!
どうせどっかに隠れてるんだろ?」
そう言って、店内を物色して回る。
「いくら探してもらっても構いません。
本当に今ここにはいないので。」
静かにそう言うエマに男の一人が、
「おい、お前もこの店のもんだろ?
何自分には関係ない、みたいな顔してんだよ?」
と、エマの髪を掴んだ。