第62章 温かい手
「……すみません。」
しばらくして、エマは
涙声のままエルヴィンに声を掛ける。
「……思ったんですけど、エルヴィンさん、
昨日の晩から寝ていないですよね?」
エマのその問いかけに、
エルヴィンは吹き出した。
「泣き止んだかと思ったら、もう私の心配か。
君も忙しい人だな。」
「と言うか、気付くのが遅すぎました。」
エマは手で涙を拭いながら言う。
「そうだな。まだ大丈夫だが、
君がそう言うなら寝させてもらおう。」
エルヴィンはそう言うと、
エマの布団に入り込む。
「え、ここで寝るんですか?」
思わず声を上げるエマにエルヴィンは
「安心しろ、何もしない。寝るだけだ。」
と、エマを優しく抱き寄せた。
「君は温かい方がよく眠れるんだろ?
私も同じだ。」
そう言うエルヴィンは、ゆっくり目を瞑る。
エマは小さく笑うと、
「・・・おやすみなさい。
エルヴィンさん。」
そう言って、瞼を閉じた。