第4章 エルヴィンの部屋にて
ある日、エマは廊下で
書類の束を抱えるエルヴィンとすれ違う。
「エルヴィン団長?大丈夫ですか?」
いつもなら側近が常についているので、
エルヴィンが書類を抱えることはない。
あまり見ない光景に、少し驚いた。
「あぁ、エマか。」
エルヴィンは書類の束から少し顔を出す。
「今日はちょっと忙しくてね。
いつも手伝ってくれる兵員も
駆り出されているんだよ。」
相変わらず優しい表情で笑うエルヴィンに、エマは
「私、夕食の仕込みも終わって
しばらく暇なんで手伝いますよ!」
と、書類の束を半分ほど持った。
「いや、女の子にそんなことをさせるのは
忍びない。
リヴァイにも怒られそうだ。」
エルヴィンは困ったように笑う。
「そんな女の子扱いされたら
恥ずかしいじゃないですか。
それにリヴァイさんはきっと
暇な奴は手伝え!って思ってますよ。」
エマが微笑み返すと、
「……それはどうかな?」
エルヴィンはそれだけ言って、ニヤリと笑った。
「とにかく、
部屋まで持っていくの手伝いますから。
途中で書類ばらまいたら、
もっと面倒なことになりますよ!」
エマがそう言うと、
エルヴィンは寸刻沈黙した後、
「……悪いね、エマ。助かるよ。」
と、穏やかな表情でエマを見つめた。