第30章 触れない理由

しばらくすると、エルヴィンは口を開く。


「やはり、リヴァイが羨ましいよ。」

「……え？」

エマは鼻を啜りながら聞き返した。


「エマが弱っているとき、
いつもこうして支えていたのだろう？
私はエマのこんな姿を
今日初めて見たというのに。」

「……こんな情けない姿、できることなら
誰にも見せたくないですよ。」

エマの言葉にエルヴィンは笑う。


「私の中途半端な気持ちのせいで、
エルヴィンさんを困らせてすみません。」

「困ってなんかいないよ。
もっと頼ればいい。」

エルヴィンはエマを抱く力を強める。




「エルヴィンさんは優しすぎます……」

エマはまだ少し涙声のまま言った。


「優しすぎる、か。
リヴァイとの違いの一つだな。」

エルヴィンはそう言って笑うと、
エマを少し離し、目を見つめる。



「……だが君に触れてしまった以上、
少しは進展させてもらうよ。」

そう言うと、優しくエマに唇を合わせた。



「これ、リヴァイさんに対する
裏切り行為ですよね……」

エマは目を伏せ、呟くように言うと、

「それを言ったら、私も同罪だよ。
ただ、今さら引き返そうとは思わないが。」

エルヴィンはそう言って
またエマにそっと唇を重ねる。


次第に激しくなっていくキスに、
エマの呼吸は自然と弾んだ。



「はぁ……
んぁっ……エルヴィンさんっ、」

「そんなに色っぽい声を出されると
止まらなくなる……」


エルヴィンは一瞬唇を離すが、
また激しくエマを求める。
エルヴィンの舌がエマの舌に淫らに絡みついて
辺りにいやらしい音が響く。

エマはエルヴィンの背中を強く掴んだ。