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自由の翼を掴む話【進撃の巨人】

第1章 出会いと変化




生まれた時から塀の中だから、
ここが鳥籠の中なんて思ったことはない。
ここから出ようと思ったこともない。
自由を求めようと思ったこともない。

生まれた時から頼れる人なんていなかったから
誰かを頼ろうとしたことはない。
誰かに助けを求めようと思ったこともない。





でも。それは彼に出会うまでの話。








ここはウォールローゼ、
クロルバ区にある小さな食堂。

私は小さいころからここに預けられ、
20歳の今に至るまで、ここで働いている。

ここの常連客は、
戦うことを知らない駐屯兵と
戦いを知ったうえで戦いたくない駐屯兵と
本当は憲兵になりたかったと
愚痴をこぼす駐屯兵が酒を飲み交わす、
いわゆる、駐屯兵たちのたまり場だ。

兎に角ここには、あまり仕事熱心とは
言えない駐屯兵しか来ないわけで
その相手をするのは面倒でもあり、
ある意味興味深くもあった。


私の居場所は物心ついた時から
ここにしかなかったし、
ここ以外の場所を知らなかったから
駐屯兵たちの話は新鮮で、面白くて
そんな彼らの相手をするのも悪くない、
と思っていた。

それに、料理は好きだし、
何を出しても美味しいと言って
食べてくれる彼らに
悪い人はいない気もしていた。










そんなある日。とても珍しい客が来た。


「……席は空いているか?」


長身でがっちりした体形の男が店に入って来る。

胸元のワッペンには、翼の絵が描かれていた。




「!!エルヴィン団長!!」


店内が一気にざわめく。



「い、いらっしゃいませ!
こ、こちらへどうぞ……」

ここの店主であり、私の育ての父親、ジムが
震える手で店の奥に案内した。


「……チッ……きたねぇ店だな……」

舌打ちをして後から入ってきた男に目を向ける。
態度はでかいが、随分小柄な男だ。


『汚い店……
ま、否定はできないなぁ。』

私は心の中で呟く。





「……ご、ご注文は?」

ジムの上ずった声。
この客がいかに大物なのかが分かる。


「適当に頼む。昼飯がまだなんだ。」

エルヴィン団長と呼ばれていたその男は
とてもやわらかい表情だ。


団長と肩書が付くほどの人なはずなのに、
偉ぶったり、横柄な態度をとったりもしない。
が、瞳の奥は
ここを見定めているようにも見える。

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