第49章 スビト・フォルテな衝撃【渋谷事変】
「原宿で呪霊を祓ったんだけど、ソイツは【帳】の外でコレを守ってたんだ。冥さんが言うには、もうそれには結界術が組み込まれてて、後は誰かが呪力を込めればいいだけなんじゃないかって」
「【帳】で自分を囲わずに外へ出て、発見や撃退されるリスクを上げる。そうすれば【帳】の強度も上げられる――そういうことなら、ユージでも破れなかったのも納得」
「いや、もっと驚けよ!」
詞織は淡々と言うが、やっていることはとんでもないことである。
コロンブスの卵と言えばその通りで、確かに理屈は合っているし、実際に結果も出ている。
しかし、結界術の基本を無視したやり方だ。普通は思いつかないし やらないだろう。
「猪野さん、詞織のこれは充分 驚いてる顔です」
「だったら ちゃんと驚いた顔しろよ!」
全然 そんな顔をしていないし、そんな声も出してなかっただろ。
猪野に指摘され、詞織は自分の頬をムニムニしながら虎杖に首を傾げて見せていた。自分では驚いているつもりだったらしいが、虎杖には「うん、分かんね」と言われている。
そんな二人のやりとりをよそに、伏黒は「あの」と猪野に小さく手を上げた。
「その理屈なら、【帳】の基(もと)はかなり目立つところにあるんじゃないですか?」
そうか。より見つかるリスクを抱え、さらに強度を上げているというわけか。敵側にとっても何重もの【帳】は作戦の中で重要な役割を担っているだろう。
「目立つ……場所……」
ポツリと呟いた虎杖が、一際 高いビルを見上げる――渋谷Cタワー。地上四十一階、高さ一八四メートルで、渋谷で最も高いビルだ。