第49章 スビト・フォルテな衝撃【渋谷事変】
“術師を入れない【帳】”――それをペチペチと叩くと、虎杖は低く腰を落として拳を構え、素早く打ち出した。
バチッと虎杖の拳を食らって振動するも、【帳】は破れない。だが、虎杖の放つ衝撃によってビリビリと震える空気に、猪野は思わず頬を引き攣らせる。
「ダメだ、ビクともしねぇ」
「虎杖でも無理か」
「ユージならいけると思ったけど、残念」
「ま……まぁまぁの威力だな」
伏黒と詞織は平然とした表情をしているが、猪野は内心 動揺していた。
この威力――打撃だけなら七海と張り合えるのではないか?
だからこそ――……。
「でも、ユージでも破れないなんて、相当 強固な【帳】」
そう言いながら、詞織が一般人を襲おうとしている改造人間に呪具の短剣を投擲する。
「どこか脆いところを探して、一瞬でもいいから穴を開けないと……中に入らないことには始まらない」
伏黒の後ろでは、【玉犬 渾】が改造人間を食らっていた。
「えっ、なんで?」
奇声を上げる改造人間を蹴り上げ、一瞬で虎杖が戻ってくる。
「なんでって……いいか、これは“術師を入れない【帳】”。つまりバリアなんだよ」
バリアというのは自分を守る……囲うものだ。こういう場合、原則として【帳】を落としている者は【帳】の中にいる。だから伏黒も、どうにか中へ入らなければと言ったのだ。
すると虎杖は「でも」と口を開いた。
「原宿ではさ、【帳】の外にコレがあったぜ」
「コレ?」
詞織が首を傾げる。
虎杖はゴソゴソとポケットから何かを取り出して見せてきた。真っ二つに折れているが、呪符を巻かれた杭のようだ。