第49章 スビト・フォルテな衝撃【渋谷事変】
『今 渋谷駅構内は正(まさ)に伏魔殿。特級とソイツらが連れてきた呪霊、夏油の息のかかった呪詛師。そして 改造人間と一般人』
「確かにそれなら、地下鉄の隣駅から攻めた方が早い。だが、そのためにはまず【帳】を解かなければ」
『緊急事態だ。マルチタスクで頼む』
メカ丸の言葉に七海が考える仕草をしながらこちらを見てきた。
五条が封印された今、おそらく この任務はすでに一級任務という枠を超えている。その中で、まだ未熟な学生に任せられる仕事のラインを測っているのだろう。
やがて、深く息を吐き出し、七海が詞織たちに向き直る。
「一級である私でしか通らない要請がいくつかある。外に出て伊地知君とそれらを全て済ませて来ます。三人にはその間に“術師を入れない【帳】”を解いてほしい」
そして、七海は一段 高い位置にある柵に腰を掛けていた猪野へ呼びかけた。
「日下部さんや禪院特別一級術師もこの【帳】内にいるはずです。合流できた場合、現状を伝えて協力を仰いでください。虎杖君の大声ももう伝わっているかもしれませんが」
「了解!」
頷く猪野に、「それから」と七海が静かな声音で指示を続ける。
「三人を頼みます」
一度 目を丸くし、猪野は再び「はい!」と力強く頷いた。
やがて、【帳】の外へ出て行く七海を見送って猪野を振り返る。彼は自分たちに背を向け、上空を見上げている。