第49章 スビト・フォルテな衝撃【渋谷事変】
「まずは話を聞きましょう。情報の真偽は後でもいい」
七海の言葉に詞織は伏黒と引き下がる。それを見て、メカ丸は『すまなイ』と言って、一拍置いた。
『結論から言ウ。この渋谷の一件の首謀者は夏油 傑ダ』
「夏油さんが?」
怪訝そうに眉を寄せる七海に、虎杖が「誰?」と首を傾げる。
「一〇〇人以上の一般人を呪殺して高専を追放された、最悪の呪詛師」
「去年 起こった呪術テロ【新宿・京都 百鬼夜行】の首謀者だ」
確か 七海の一学年上の先輩で、五条とは同期のはずだ。
詞織や伏黒が呪術界に足を踏み入れたときにはすでに離反していたが、星也や星良は学生時代に五条と出会っているから、夏油とも顔見知りのはず。
詞織と伏黒の説明に、虎杖が「やべぇヤツじゃん」と顔を青くさせた。
「けど、処刑されたんスよね?」
「そのはずです」
猪野に聞かれ、七海が頷く。二人の言う通り、夏油はすでに処刑済み。生きているはずがない。
『あぁ、そうダ。正確に言うと、夏油 傑の裡(うち)にいる何者かダ』
「何それ……」
思わず顔を顰めてしまう。
メカ丸の言葉が本当のなら、その“何者か”は夏油の死体を乗っ取っているということ。その上こんなことまでして……死者への冒涜ではないか。そんなの、酷すぎる。
「…………」
「詞織、落ち着け」
カタカタと怒りに震える詞織の手に伏黒が触れた。その温もりと声音に気持ちが少し和らぎ、詞織はゆっくりと息を吐き出す。