第49章 スビト・フォルテな衝撃【渋谷事変】
「呪霊の方が君たちより利口だな」
刺すような視線と殺気に振り返ると、未だ【無量空処】の影響で立ったまま気絶する人波の中で、明るい髪色の少女と黒髪の少女――枷場(はさば) 菜々子と美々子の姉妹が血走った目でこちらを見ていた。
「わたしたちはオマエに協力し、猿(非術師)どもを落とし続けた」
「約束通り、夏油さまの身体を返せ」
――夏油さまをこれ以上、弄ぶな。
揃う二人の言葉に、夏油は噴き出すように笑う。
「返すわけがないだろう。君たちの頭まで空っぽにした覚えはないんだがね。次 術師と約束するときは“縛り”であることを明確にするんだな」
額を示しながら言って、夏油は別人のように冷ややかな視線を姉妹に向けた。
「――消えろ。それとも、この身体に殺して欲しいか?」
一つ凄んで見せると、「後悔するぞ」と言い置いて、二人が去って行く。
「……後悔か。さて、どんな味だったかな?」
五条 悟の情報を必死で処理する【獄門疆】の前に座り込み、夏油は嘲笑うように口角を持ち上げた。
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