第48章 混乱極まるラプソディ【渋谷事変】
『オマエ、ドッチだ?』
何がだ、と問い返す術師に蝗GUYは続ける。
『賢いノカ、賢くないノカ……』
俺は賢い。だから、この勝負も勝てる。
すると、術師は静かにこちらに向かってきた。
「賢いヤツは、あまり自分のことを賢いって言わん」
そ――なの⁉︎
コイツ、めっちゃ賢いじゃん!
拳を構える術師に、蝗GUYも応じる。
手数勝負――相手は二本でこちらは四本。自分の方がたくさん拳を放てる。どうだ、自分には分かる。
オマエがどんなに賢くても、自分の方が賢いのだ!
だが、蝗GUYの拳は避けられ、なぜか自分ばかりが攻撃を食らっていた。
おかしい。どうしてだ。
腕も、顎も、目も――人間より自分の方が優れている。
――ナノに なンで……なンで、俺ダケ殴らレる⁉︎
素早い拳の連撃にのけ反るも、懐に入ってきた術師に蝗GUYは口角を上げた。
やはり、自分の方が賢い。
バッタは地中に産卵するため、腹部は伸縮し、先端が硬く通常時の三倍近く伸びる。
尖った腹部の先端が伸び、術師の眼前に迫る。
これで自分の勝ち――そう思ったのも束の間。術師は腕で攻撃をいなし、拳を打ち据えて腹を吹き飛ばした。
「オマエ、人を喰ったんだ」
なんだ、コイツ……おかしいだろ。
自分の方が賢いはずなのに……何をやっても勝てない……。
「――覚悟は、できてるよな?」
冷や汗を流す蝗GUYに、術師は低い声で言い放った。
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襲いくる大量の元人間の異形を捌いていると、不意に異変を感じた冥冥は動きを止めた。
「姉さま」
どうやら憂憂も気づいたようで、冥冥は「あぁ」と一つ頷く。
「【帳】が上がったね。虎杖君を待って、地下五階に向かおう。
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