第46章 夢は終わってダ・カーポ【これからの話/宵祭り】
――二〇一八年十月十九日。
「五条先生」
「寝てる。起きない」
「ダメだよ、詞織ちゃん。髪 引っ張っちゃ」
「先生も寝るんだな」
「当たり前でしょ。何 言ってんの、アンタ」
誰かの声が聞こえる。
この声は……伏黒、詞織、順平、虎杖、釘崎だ。
アイマスクを半分持ち上げて見上げると、五人が顔を覗き込んでくる。
「おっ、起きた」
目を瞬かせる虎杖。
「おはよ、先生」
淡々とした、けれど微かに柔らかな表情をする詞織。
「もしかして先生、疲れてます?」
心配そうに眉を下げる順平。
「ちょっと その椅子、高いヤツでしょ」
五条が座る椅子を指し、自分にも座らせろとジェスチャーをする釘崎。
「呼びつけといて居眠りしないでくださいよ」
眉を寄せる仏頂面の伏黒。
――「……俺だけ強くてもダメらしいよ」
あの日 思い知った……最強であるがゆえの無力さ。
だから、五条は教育の道を進むことにした。強く聡い仲間を育てるために。
自分一人が強いだけではダメなら、自分と同じくらい強い術師を育てればいい……と。
すでに自分と肩を並べる実力を持つ者もいる。
特級呪術師――神ノ原一門当主で【陰陽術式】の使い手である神ノ原 星也。
同じく特級――底なしの呪力と術式を模倣する術式を使う元・特級被呪者の乙骨 憂太。
優秀な術師も揃ってきた。
神ノ原 星良の【反転術式】は家入と遜色ない上、戦闘手段を持つ分、戦場を駆け回って仲間を治療できる。
他にも五条の後輩――七海 建人はどんな状況でも冷静さを捨てない一級術師で、灰原 雄は七海に一歩及ばないものの【折神】を用いて多様な戦法を使える。