第44章 決戦のアッチェーソ【呪術廻戦0】
『ねぇ、詞織。術師に命の危険はつきもの。あなたがそう言うから、普段は我慢して“あげているわ”。でも、これは……許せない。許さない。許したくない‼︎』
詩音から溢れる呪力に空気が萎縮し、背後に庇っている術師たちも息を呑んで震え、中には泡を吹いている者もいた。
「よせ、詩音!」
『あたしに命令しないで‼︎』
肩を掴もうとするも、詩音は伏黒の手を乱暴に振り払う。
『詞織、心配しないで。“縛り”を解いてもらう必要はないわ。あなたが身体を貸してくれるだけで、あの薄汚い呪霊を消してあげる』
楽しそうに笑う詩音に、詞織の心が揺れているのがはっきり分かった。リスクは高いが、状況を打破するために詩音の力が有効なのも分かる。
しかし、詩音は詞織以外の全てを呪う【呪い】だ。呪霊を祓ったあとでどう行動に出るか分からない。最悪、自分たちを襲ってくる可能性すらある。
「……詩音、お願い。メグたちは傷つけないで」
『詞織ったら、難しいことを言うのね。でも……あなたの命令を聞くことは“縛り”で課せられているから仕方がないわ。詞織に嫌われたら存在する意味がないもの』
――だから、今回は見逃してあげる。
グッと顔を近づけて艶やかな笑みを浮かべると、詩音は長い髪を振り払って呪霊と対峙した。
やがて、呪霊が大きく口を開いて衝撃波を放ってくる。ビリビリと空気が肌を引き裂くも、詩音は『【裂破】!』と言霊を放って呑み込み、逆に呪霊を引き裂いた。
耳障りな悲鳴が上がる。