第43章 それはとんでもないトロイメライ【呪術廻戦0】
「星也」
「人遣いが荒いですね。先生がやった方が早いでしょ」
そう言いつつも、星也が呪霊に向かって跳躍する。そして、柏手(かしわで)を打つと【天枢】を手にした。
「【雷(いかづち)を纏いし軍神 建御雷神(たけみかづちのかみ)に畏み畏み白(もう)す。葦原中国(あしはらのなかつくに)を平定させし神の御剣。神血より生まれ、荒ぶる神をも退けるその御業をここに顕現させ、我に悪神百鬼を討たせ給え】」
【天枢】――伸縮式の棒の形をした呪具で、伸ばすことで刺突に特化した棒、短い状態で刃のように呪力を伸ばして剣としても使えるのだと後で聞いた。
その真価は――神器の依代。
【天枢】から呪力が溢れ、直刀へと姿を変える。雷を纏う刀を持った星也に、髑髏の軍勢が迫る。
「【雷帝神勅(らいていしんちょく)――急々如律令】」
奔る稲妻が髑髏の軍勢を切り裂き、星也の道を作る。そして、バチバチと爆ぜる神剣――【布都御魂剣(ふつのみたまのつるぎ)】が呪霊を斬り裂いた。
乙骨たちを囲んでいた髑髏の群れが消え去る。
「すごい……」
「さすが、星也さん」
「実質、悟の右腕だからな」
「すじこ」
いつか、自分もあれくらい刀を使えたら……。
【天枢】を一振りして元の形に戻した星也を見て、乙骨は自分の刀に視線を落とした。