第43章 それはとんでもないトロイメライ【呪術廻戦0】
「君はとても素晴らしい力を持っているね。私は、大いなる力は大いなる目的のために使うべきだと考える」
そう、手を握りながら夏油は続ける。
「今の世界に疑問はないかい? 一般社会の秩序を守る呪術師が暗躍する世界さ」
何の話をしているのか分からず、乙骨は首を傾げるしかなかった。やがて手を離し、「つまりね」と夏油が肩に腕を回してくる。
「強者が弱者に適応する矛盾が生まれてしまっているんだ! なんって嘆かわしい!」
「はぁ……」
「万物の霊長が自ら進化の歩みを止めてるわけさ! ナンセンス‼︎ そろそろ人類も生存戦略を見直すべきだよ。だからね、君にも手伝って欲しいわけ」
小難しい話が続く中で矛先が自分に向き、乙骨は首を傾げた。
「何をですか?」
すると、夏油はクッと口角を上げ、それなのに穏やかにさえ見える笑みを浮かべて口を開く。
「非術師を皆殺しにして、呪術師だけの世界を作るんだ」
思わず目を見開き、息を呑んだ。
何を、言っているんだ?
なぜ そんな話になる?
真希たちも戸惑いから強張った表情をしている。
「そこまでだ、傑。その子たちから離れろ」
「悟ー! 久しいねー!」
ザッと砂利を踏む音と共に五条が現れ、夏油がニッコリと笑顔を向けた。
五条の後ろには星也、星良、七海、灰原……その他 多数の術師が臨戦態勢で控えている。
「俺の生徒にイカれた思想を吹き込まないでもらおうか」
珍しく真剣な表情で殺気立つ日下部が一歩 前に出た。