第41章 青き春はドレンテにひび割れて【玉折】
「……詩音」
『……何よ。本気で言ってるの?』
星也の視線に、詩音がたじろぐ。
『できるわけないでしょ。あたしたちの死刑は確定してる。でも、むざむざ殺されないわ。何人でも道連れにしてやる!』
この分だと、死刑執行は手と口を塞がれ、身体も固定される。そのうえ呪符も持たないのでは、さすがの【陰陽術式】も発動できないだろう。
「君はそれで本当にいいの? 君が死ねば詞織も死ぬ。君が自分の命を投げ出して守ろうとした存在だ。それをこのまま死なせるの?」
詩音が息を呑む気配が伝わってきた。
ここへ来るまでの間に、【神ノ原の惨劇】で何があったかは聞いている。
胸くそ悪い神ノ原一門のお偉方と古い因習によって、双子の姉妹は座敷牢に閉じ込められていた。
生まれてすぐに片割れは殺されるはずだったが、当時の一門の当主である双子たちの父親によって命を長らえていたらしい。
だが、父親が殉職したことで止める者がいなくなり、姉妹での殺し合いを強要された。ざっくりいえばそんなところか。
父親の死後、星也は当主を引き継いだが、子どもだったこともあり、妹たちを助けたいという星也の発言は聞き入れてもらえなかったらしい。
『詞織を助けるために、あたしを殺そうってこと……?』
「違う。言ったはずだよ。二人を助けにきた」
そう言って、星也は五条を振り返り、詩音に示した。