第40章 正しさに混ざるノイズ【玉折】
巨鳥の姿をした呪霊に乗り、星也は夏油と五条の行方を追っていた。
やがて五条の名前が書かれた札が急降下し、広大な敷地を持つ建物に向かう。
「あれか」
「夏油さん。あそこ、何かいます」
遠目から小さな陰を見つけて指をさすと、夏油も気づいたのか、建物の前に降りるよう呪霊に指示を出した。
「この呪霊……あの男が連れていた……」
「あぁ」
体長は短くなっているが間違いない。自分たちを襲った黒い男が武器庫代わりに連れていた格納型の呪霊だ。
夏油の話では、黒い男との交戦中に取り込もうとしたが弾かれたそうだ。おそらく、男の間に主従関係が成立していたことが原因ではないかと彼は呟いた。
それも、男が死んだことで解除され、どういうわけか夏油のところへ自ら来たらしい。
夏油が手を伸ばし、呪霊を黒い球体にした。
「夏油さん……?」
「すまない。すぐに済ますよ」
彼は黒い球体を口に入れ、飲み込んだ。
これが、【呪霊操術】による呪霊の取り込み……顔を青くする夏油を無意識に見つめていると、彼は申し訳なさそうに眉を下げた。
「嫌なものを見せてしまったね」
「いえ……大丈夫ですか?」
「君の方が大丈夫じゃないだろう? 顔色が悪い……呪力を消費しすぎてキツいんじゃないかい?」
頬に触れる夏油に、星也は首を左右に振る。
「これくらい何でもありません。それより、先を急ぎましょう」
札の案内で建物の中に入った。信者が侵入者だと騒ぎそうになるも、夏油が素早く接近して気絶させる。
そうして地下へ続く扉を開くと、割れんばかりの拍手が耳を打った。
慌てて奥まで進むと、信者たちの前で五条が白い布を被せられた少女――天内 理子を抱えて立っている。
息を呑む星也たちへ視線を向けることなく、五条が口を開いた。